はじめに

 椅子は日常の生活において、食事・仕事・くつろぐときなど様々な用途で多くの場所で使用されています。それらは、多様な形をしていますが基本的には2つの部位に分けることができます。一つは、全体を支える木や鉄・プラスチックでできたフレーム(木部)の部位。もう一つは、座り心地をよくするために座面や背中・肘の部位です。椅子張りは、後者の座面や背中・肘の部位を作っていく仕事になります。

製作の流れ

製図
まずは、製図があります。店舗図面やデザイナーが考えたイメージを図面に落とし込んでいきます。木部の上にバネやウレタンを張るため、一回りサイズの小さい木部を用意する必要があります。また、仕上げの方法の違いによって引き込み部やタッカーを打ち付ける部位を考えて設計します。その後、木工屋に木部の作成依頼を行います。
お客様の希望によって、写真や手書きのスケッチから図面を起こす場合もあります。
下張り
完成した木部に、 コイルやSバネ・ウェビングテープ を取り付けていきます。
ウレタン加工・張り
使用するウレタンは、大きく2種類あります。一つは、体や形を支持するためのチップウレタンと座り心地をよくするためのソフトウレタンです。当社では、様々な厚みや硬さのウレタンを組み合わせることで目的に応じた施工を行います。
型取り・裁断
現物に合わせて、型を作成していきます。裁断では、生地の向きやパターンを考えて方に合わせて切り出していきます。
縫製
ミシンを使用して縫製を行います。綺麗な仕上がりには、丁寧で正確な縫製が必須です。
張り込み
タッカーを使用して、縫い上げた張地を木部に留めていきます。
仕上げ
パイピングや鋲・ピット(生地を挟んで留める金具)仕上げなど装飾にかかわる部位の取り付け。椅子の底部に金巾と呼ばれるうすい生地の張りつけ。足やプラパートの取り付けを行います。

張り工法の違い

椅子張りでは、使用する材料を変えることができます。これによって、構造や座り心地が大きく変わっていきます。

ベニヤ下地を使用する場合

現在、最も多く使用されている張り方になります。ベニヤ板に、ウレタンフォームをのせて上張り仕上げを行います。底付き感はありますがスタイルを薄くしたい場合や商業施設など強度が要求される場面にむきます。

フレームに下張り施工をする場合

こちらも、多く使用されている張り方になります。木のフレームにコイルやSバネ・ウェビングテープ(布バネ)をつけ、体を支えます。座った時に、ばねの作用で適度に沈み、ベニヤ下地と比較すると座る部位に木がないので底付き感がなく柔らかい感触になります。

鼓バネを使用する場合

鼓バネを入れ「そく土手」という土手を成形し、仕上げていく昔ながらの工法です。昔の高級な椅子などに使用されていることが多いです。素材も、釘やバネ以外は天然のものを使用してします。またバネを紐で繋ぎ(つり作業といいます。)、釘で留めていく作業など職人の力量に仕上がりが大きく影響されます。